コントロールされるだけの人より、イキイキ個性を発揮する人へ
☆塾長:岩﨑 美好
10代は、人間の成長にとって、とても重要な時期です。
この期間、親は子どもの成功を願い、しばしば学習活動にも深く関与します。
しかし、心配のあまりしてしまいがちになる親の過干渉・過度なコントロールは、今や日本の病理的現象でもあり、深く社会に負の影響を与えている可能性があります。
そこで、お子さんに、「言われたことだけしかできないコントロールされる人間」になってもらいたいのか、「生き生きと個性を発揮して社会で生きていける人間」になってもらいたいのかという子育て・教育の長期目標から、親子関係のあり方をどうしていくのが望ましいかを、ご一緒に考えていきたいと思います。
教育虐待という新しい概念
”教育虐待”という言葉をご存知でしょうか。
教育熱心を通り越して、教育虐待になっている現状があります。(下記のNHK記事をご参照ください。)
過度の学習強制とコントロールを塾側にも要求し、強制と管理が足りないと言って退塾されるケースが、ままあります。
ある10代のスポーツ指導をされてる有名な保護者(母親)の言葉は忘れられません。中学生の自分の子どもについて言われました。
「子どもなんて、動物とおんなじ。強制して、調教していかないといけないんですよ!子どもの意思なんて聞く必要ありません!!」と。
また別の高3年生の男子のお父さんは
「この子に学習計画なんてたてられるはずがない!全教科やることを全部決めて、その学習プランを自分(父親)に出せ」と。その間、その男の子はずっと下を向いていました。
普段は「パパがやってやるからな」とまるで小さな子に接するように声がけされるのです。
動物を調教するように扱われた子どもたちの将来が心配です。
今の日本で大人の問題が子どもの問題を生み出しています。子どもの問題というのは意外と少なく、ほとんどは大人が問題が作っているとみていいでしょう。
親のコントロールとその影響は生涯続く
幼くても人間には感情があり、子どもの頃の影響は上記の表にもあるように、大人になってもトラウマとなって人生を影をおとします。
子どもの頃の傷は人生に影響を与えます。多くの人が子どもの頃のトラウマで生涯悩み続けています。
かつての親がその子の方向性をネガティブな意味で方向づけしてしまったのです。
教育虐待まで極端でなくとも、親の心配は尽きないものです。
それゆえ「子どものため」と思って、過干渉になるケースはよくあります。そして、親の願いとは逆に、子どもは自主性を奪われ、学習への自発的な関心を失わせてしまうことがあることに注意が必要です。
そしてもう一つ、親御さんの基準では不十分だと思っても、子どもさんをけなさないこと。グッと我慢してください。親の評価が子にとっての自己評価になってしまいます。
自己肯定感が高いと試験にも強い!
自分で決めて行動すると、「自己効力感」=自分でできるという感覚が強くなります。子どもというのは、そうやって大きくなっていくものです。
中学、高校になると子どものために親ができることは、随分少なくなってきます。それを寂しく感じている親御さんも多いようで、いつも自分を必要として欲しい、自分の存在感を確認したいと過干渉になることもありますが、主人公を親(自分)ではなく、子にしていくこと、裏方に徹底して回ることで、子どもがイキイキとしてきます。
生きる自信は「自己肯定感」と言い換えていいかもしれません。
「落ち込むことがあったとき、みんなシュンとして下を向きますが、自己肯定感が高い生徒はすぐに気分を切り替え、上を向くことができたのです」(『子供の自己肯定感を「下げる親」「上げる親」の違い』
東大理三に3男1女を入れた佐藤ママの声かけ:東洋経済オンライン:佐藤ママの声かけより https://ur0.jp/FReoT)
肯定感の高いお子さんは、困難に直面してもすぐに上を向き、気持ちを切り替えて前に進むことが出来ます。自分への信頼が根底にあるので、どこかで「大丈夫、できる」と思えるものです。
親子関係にも相性がある
親子だから通じるとも限らず、親子だから相性がいいとも限りません。
子どもさんに前向きな力を与えることは、親が愛情をベースに子どもをサポートし、成長を促進するための重要なアプローチです。
いうは簡単ですが、実生活ではいろいろ難しいこともあります。
身近すぎる関係を客観的に見てみましょう。
親と子は全く別の人格を持った他人(他の人)だと思うことができるでしょうか。
もしそう思えないなら、問題はお子さんではなく、親御さんの中にあります。
以下で、親子関係の構築に向けたアプローチを詳しく見ていきます。
サポートと励ましの提供
子どもが困難に直面した時(例えば、成績が落ちた、不合格だった、など)、親が提供できることは、とにかく”安心”の一言に尽きます。無条件に愛して励ましてくれる最初の人、それが親になります。
無条件にどんな自分でも受け入れてくれる親御さんの存在が「大丈夫、世の中は安心して生きることができるよ」と生きる自信を与えてくれます。
ただ、親だから全て上手にできるわけではありません。親だからといって、育児のプロでもなんでもないからです。大抵は、子どもの頃の自分と親との関係を無意識に再現してしまうことが多いのです。
”パーソナル診断”から見えてくること
子育ての成功・失敗を考える時、完全な人間が存在しないように、完全な親も存在しません。完全な育児の成功というものも存在しませんから安心してください。
特に中学から高校にかけては子どもを見守る(干渉しすぎない)段階になっていきますが、性格が違う以上求める関係もいろいろです。
体験授業を受けていただいた時に10分ほどの”パーソナル診断”を受けていただいています。お子さんの個性をご本人にも保護者の方にも知っていただくためです。ある程度の年齢になると、はっきり傾向が現れやすくなります。
そこから私たちが気づいたことは、
「どのタイプにも強みと弱みがあり、弱みに焦点を当てるより、強みを活かす方がずっと生きやすくなる」ということです。
実際、受けていただいたお子さんの診断結果への反応は大抵「その通り」だといわれます。周りがその個性を認めて周りと同じことを求めないことでもずいぶん気持ちは楽になると思います。
常に夢を持って前進したい楽観的な人もいますが、心配性で着実に一歩一歩進むことを望む人もいます。お子さんが最も安心するのはどの進み方でしょうか。
教育は、人の成長のためのサポートーその活かし方
例えば、食べることは生きる上で必須ですが、過度に摂りすぎると重篤な病気を起こしてしまいます。
教育も同じです。本人の限界を超えてしまうと、ネガティブな影響が強く出てしまいます。筋肉とスポーツを例に考えていただくといいと思います。脳と勉強の関係も同じで、前向きに継続し続けることで筋肉のように少しずつ鍛えられます。
教育の本来の目的は、社会に適応して生きていくため、自律して生きる力をつけるためでしょう。そう考えると、仕事ができる人になることが教育の一つの目標といえるかもしれません。
日本の現状を考えると、これからの世代は国内に引きこもった状態というわけにはいかないでしょう。
縮小する国内市場に対して、世界人口の半数を占めるアジアが近くにある、地理的優位性を活かすことにもなるでしょう。ますます企業が海外に進出していくことは必須です。
海外でも働ける柔軟性と、国内でしか仕事をしたくない、という人では選べる条件の範囲が広がってきます。
教育は、長期的目標が大事
教育の長期目標を再確認すると、社会に適応して生きていくため、自律して生きる力をつけることでしょう。
その結果はすぐにはわからず、道が長いので、その時々に短期目標があります。その一つが高校入試であったり、大学入試であったりします。
考え方の順番を間違えるととんでもないことになります。(残念ながら、とんでもないことになっているご家庭は多いと思います)
ビジネス同様に、向かうべき目標から逆算して今の受験勉強のやり方を一緒に考えて、計画の立て方なども学習してもらっています。
生徒さん本人の選択を大事にして、ご家庭とLEADで、お子さんをサポートするための協力関係にあるチームとして取り組んだ場合、ほとんどのケースで、受験においても最善の結果になっています。
受験勉強は、もちろん受験生自身が頑張るものですが、親御さんには親御さんの、そして塾には塾の役割があります。
3者が、互いの良さを生かし高め合う方向で協力関係をうまく築き、最善の学びを追求する中で、お子さんの合格につなげていきましょう。
お子さんの事でご相談があれば、お知らせください。ご相談の時間の設定をさせていただきます。
教育に関する参考記事
*今までにこのHPに掲載した教育・子育ての関連記事をいくつかピックアップしておきます。
クリックしていただくと、ご覧いただけます。
☆ユング心理学の草分け河合隼雄先生の名著『子どもと学校』に学ぶ
☆人の成熟を支援するためにこそ教育はある!『複雑化の教育論』(内田樹著)に学ぶ
☆子どもの才能を伸ばすヒント!スタンフォードに学ぶ未来の教育
☆ハラリ21Lessons〜21世紀の人類のための思考〜19章「教育」のノート
*受験/勉強法情報:その他色々な教育・受験・勉強法などの情報を載せていますので、関心おありのものをお探しいただけると嬉しいです。