大学入試現代文って、どんな科目?

 おはようございます。こんにちは。こんばんは。大学受験パーソナルラボLEAD国語科の桝崎徹です。ご無沙汰しております。

 コロナの第二波が今そこにある危機のなかではありますが、LEADでは夏期講習がスタートしています。もしもの場合に備えて、LEADではオンライン授業の準備も万全です。本当に、今までの常識は通用しない時代に僕たちは立たされているのだと痛感している毎日です。

痛感しながらも、日々は過ごしていかなければなりません。特に受験生の皆さんは状況が定かではない中、心配事が多いとは思います。しかし、どうかここで易き道に流されることのないよう、周囲の状況を冷静に受け止めながら、自分の目標に近づけるよう、模索しながら進んでいきましょう。

現代文とはどんな科目か、考え直してみましょう!

 さて、“現代文”です。この科目、苦手な方が多いですね。“センス”“感覚”“読書量”というような“誤解”をいまだに信じ込んでいる皆さん、そして保護者の方が多いからだと思います。

 何を隠そう、僕自身もそのような“誤解”を信じていた高校生でした。小学生時代から本を読むことは好きだったし、作文や読書感想文ではコンクールなんかで賞ももらっていたし、中学・高校ともに国語の定期テストの成績はよかったし・・・。(なんいう小さな世界で悦に浸っていたのでしょうか!!)

 しかし、そんな小さな国語・現代文という科目に対する自信は、部活を引退し、高3の夏以降の受験勉強スタート時にあっさりと打ち砕かれました。

・・・模試で全く点が取れない!・・・なんでや!!

―――いまから思えば当たり前なんですが、定期テストで直前に指定されえている範囲をほぼ丸暗記し、(『教科書ガイド』まで買って・・・。)、先生の板書もほぼ完ぺきに暗記し・・・。そんな勉強法が、受験で通用するはずがないのです。

 まったく自信なくなった桝崎少年は、一旦、現代文という科目の性質はどういうものかを考えることにしました。

入試現代文とはどういうものなのか

 どんな現代文の参考書や問題集を読んでも書かれていることは「客観的」「論理的」という言葉です。僕自身も予備校講師になって現代文の授業をするとき、「客観的読むねんで。」と言うようになったのですが、そのことに気付けたのは、先ほどの高3の受験勉強スタート時からしばらく経ってからでした。

 いきなりですが、次の問題をやってみてください。

問1 日本政府のコロナ対策の政策は「正しい」か「間違っている」か。正しいものを次の中から選び、番号で答えなさい。

1、日本政府のコロナ政策は「正しい」。
2、日本政府のコロナ政策は「間違っている」。
3、日本政府のコロナ政策は「正しい・間違っている」両方である。
4、日本政府のコロナ政策は「正しい・間違って」とかかわりがない。

※ヒント・・・もちろんこれは“入試現代文”として考える問題です。

 さて、正解はどれでしょう。

 これ、ちょっと、意地悪な問題だったかもしれません。この問題、実は「正解が出せない」問題なのです。

 ごめんなさい。その理由を述べるために、こちらの問題をもう一つ解いてみてください。

問2 問1にはなぜ正解が出せないのか。正しいものを次の中から選び、記号で答えなさい。

A, 本文がないから。
B, 高校の授業では習っていないことだから。
C, 日本政府のコロナ政策が正しいか間違っているのか、まだわからないから。
D, このような問題に軽率に答えを出してしまうと、ネットで叩かれる結果に陥ることになるから。

※ヒント・・・もちろん、これも“入試現代文”の問題として考えてみてください。

 さて、この問2には正解があります。それは、「A. 本文がないから。」です。

今年度の共通テストで結局なくなってしまった記述式問題風に答えるならば、

入試現代文は、筆者の意見をもとにして答えるものであるのに、問1.には筆者の意見がないから。

ということになります。筆者の意見・主張が書かれている文章を「本文」といいますので、問1.にはその「本文」がないんですね。

 ところで、上記の二つの問題をなんで出したのかというと、現代文というものの性質を知るためでありました。たしかに、問1.の問題に無理やり答えようとするのは、そんなに難しいことではありません。ニュース番組や新聞、あるいはネットから仕入れた情報を頼りに、また自分の直感でも答えることはできます。

しかし、それが一番、入試現代文でやってはいけないことなんです。

絶対に守らなければいけない「ルール」

 すべての現代文に共通する「ルール」は、すべての問題(小学生のテストから大学入試問題を含めて)の一番はじめに書かれています。

「次の文章を読んで、後の問いに答えよ。」

 もう、いやというほど皆さんも目にしてきた文言だと思います。「こんなん、当たり前やん~!」「・・・知ってるし!!」・・・いや、たしかにそう言われるのはわかります。しかし、この誰もが目にしている文言の中に大切な指示が隠されているのです。

 その指示とは、

「文章」(=本文)に書かれていることをそのまま答えよ。

 という指示なんです。

この設問者からの大切な指示を無視している人が非常に多いのです。先ほど書いてましたが、高校時代の僕も完全にそうでした。

ですから、書かれている内容に対して皆さんがどう思うか、感じるかは一切聞かれてないんです。自分の時間としての読書であれば、様々な感想を抱き、感動してもらってもいいのです。しかし、現代文では文章に書かれてあるままに答えなければならないのです。(自分の情けない体験として、模試で小説問題を解いていた時、登場人物があまりにかわいそうで、また文章が美しく、落涙しながら模試を解いていたことが思い出されますが・・・そんなん、最低の読み方、解き方なんです・・・。)

それではこの例題はどうでしょう。

例題1  次の文章を読んで、後の問いに答えよ。

 桝崎は長髪で、それがまたサラサラの、イケメンである。

問 この文の内容と一致するものを、次の選択肢①~③から一つ選べ。

① 桝崎は長髪で、それがまたサラサラの、イケメンである。
② イケメンとは魅力的な人、特に面貌が魅力的な人である。
③ 桝崎はどこからどう見ても、どう考えてもイケメンではない。

・・・まぁそんな、目くじらをお立てにならず。引き続き現代文の性質を理解するための問題だと考えてください。

 正解は①です。

もとになる文(=本文)に書いてあるとおりを答えているため、①が正解なんです!

 現実には、桝崎はスキンヘッドです。もちろんサラサラというようなものはなく、適合する修飾語があるとすればテカテカです。しかし、現代文という科目では、事実と合うものが正解になるとは限りません。

 「社会」は事実と合うものが正解になる科目です。だから事実が変われば「社会」の正解は変わります。新たな遺跡や文書の発見で歴史の新しい事実が確認されれば、教科書は書き換えられます。その内容が書かれている選択肢であれば、それが正解となります。

 それに対して「現代文」は文章(=本文)と合うものが正解になる科目です。ですから、イケメンの定義が事実と合っていても、②は不正解になるのです。

 また、「現代文」は自分の意見を述べる科目ではないので、③も不正解になります。(・・・それに、ここまで言われたらいくらなんでもひどすぎます・・・。) 自分の意見が求められるのは「小論文」ですよね。(「小論文」でもイキナリ自分の意見を述べることが求められるものもありますが、まず課題文を正確に(=客観的に)読み取り、要約し、そのうえで自分の主張を述べていく形式が多いのです。ですから、まず求められるのは国語力ということになります。)

 ここまでのことをまとめてみますと、

・現代文とは、文章(=本文)に合うものが正解となる科目である。

・自分の意見を言うのは「小論文」であって、「現代文」ではそうしてはならない。

 つまり、「現代文」という科目は、習ったことを答えたり、自分で考えたことを答えたりする科目ではなく、「本文」として与えられた文章の「筆者の意見・主張」はどういうものだったのか、ということを答える科目なんですね。ですから、試験当日の、まさにその試験問題を開き、本文を読み始めるその瞬間まで、正解がわからない科目なんです。

改めて、“自分”が入り込む隙間がないんですね。“自分”の感情を抑え込んで、ただただ筆者の言葉の筋道通りに読んで、答えていく。

“自分”を無にして、ただただ書かれていることをまとめていく。そうすることを、“客観的”というんですね。言葉を変えると、少々大げさかもしれませんが、“自分を殺して読んでいく”ということになります。

 あ、でも誤解のないように書いておきますが、その筆者の意見・主張はいつまでも正しいというようなことではないですからね。問題が終われば無視していいんです。(・・・そんなことわかりきったことかもしれませんが。)

 個人的には、自分も筆者の主張や文体の好き嫌いはがぜん、ありますし。好きな筆者の考えには心から共感しますし鳥肌が立つくらいのもの(プラスの意味で)もあります。嫌いな筆者、その考えは読みたくもありませんし、鳥肌が立ちます(もちろんマイナスの意味で)。かなり感情的になりますが、もしその本文に答えを出さなければいけないときは、感情を出さないように努めます。感情をなくすことは無理ですので。

 また、自分の考えを入れずに読んでいくとは書きましたが、それでもやはり、なにも考えないままでは文章は頭の中に入ってきません。こちら側が寄っていかなければ、先方も勝手に近づいてきてくれません。そのうえ、ある程度の語彙は知っていなければなりません。「現代文」という科目が、何も準備しないで、何も考えないでいい点が取れるという科目であるということではありません。・・・そもそもそんな科目なら、誰も苦労はしませんよね・・・。

 それではどうしていけばいいのか。

 まずは、与えられた文章(=本文)を「正しく読む」ことから始めましょう!。

 さぁ次回は「入試現代文の本文の正しい読み方」について、お付き合いくださいませ。

 最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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