ハラリのインタビューを見て、パレスチナ問題を考える

現在、ウクライナに続いて、パレスチナ・ガザで、戦火が燃え広がり、イスラエル・パレスチナの多くの民衆が苦しんでいます。

今、日本にいる私たちは、この事態に対して、どのような態度を取ればいいのか、しっかり考えていきたいと思います。

このパレスチナ紛争を理解するためには、数千年の西アジア・ローマ帝国の歴史とその中でのユダヤの歴史、7世紀以降のイスラムの歴史、近代の帝国主義と植民地の時代における西アジアの歴史、そして、1948年の第1次中東戦争=イスラエル建国とパレスチナのアラブ人の苦難の始まりからの75年の歴史を踏まえて考えていく必要があります。

LEADでは、2020年から、ハラリの「21レッスンズ」を読むゼミをやってきましたので、ゼミ生にとっては、ハラリの考え方は馴染みがあります。

今回、そのハラリが、ANN報道ステーションのインタビューに応じて、今次の戦火についてのコメントを伝えてくれています。

イスラエルの一員としての発言ではありますが、これ以上戦火を拡大してはならないという立場で発言しています。イスラエルとパレスチナのもつれた糸を、いかに人類共通の立場に立って解決していくのかについて、自分自身の影=マイナスの感情にも向き合いながら語ってくれています。

パレスチナにおいて、アラブとユダヤの間で平和な関係を建設的に築いていくのは、相当エネルギーが要ることだと思います。

恐らく、国際社会の世論のバックアップも相当必要になると思われます。
日本も、この中東情勢と無縁ではあり得ません。第4次中東戦争では、オイルショックに見舞われ、日本の高度経済成長もストップしました。そして、今も、日本は、中東からの石油に大きく依存していて、中東の平和は、私たちにとっても切実な課題であるはずです。

パレスチナの平和を実現することは、私たちにとっても大事なテーマであるはずです。
何よりも、まず、パレスチナで、人が大勢死んでいく事態をなんとかしたいという思いを持ち続けたいと思います。その思いを出発点に、どうしたら、この地域に平和が訪れるのかを、人類の一員として考え続けていきましょう。

そのことを考えるヒントを、ハラリから学んでいきたいと思います。
まずは、インタビューの動画が、YouTubeにアップされていますので、それをぜひご覧になってください。
そして、その発言をテキストにしてみました(一部、抜けていたり、全訳せずにはしょたりしている部分もあります)ので、以下の文章を読んで、ぜひ、じっくり考えて見てください。

ハラリもインタビューの中で言っていますが、ハラリやイスラエルの側からの発言だけでなく、もう一方のパレスチナのアラブの人からの言葉もいずれは見ていくようにする必要はあります。
今回は、まず、ハラリの言葉に耳を傾けて見てください。

↑ クリックで、動画が見られます。

Harariインタビュー

Q:ハラリさんはイスラエル人として、そして歴史学者として歴史を見てきたと思います。 それぞれの立場から今回のことをどのように受け止めていらっしゃいますか?

A:「現在、イスラエルは数年間で最も危険な状態にあります。 そして、全地域が数年間で最も危険な状態になっています。
核戦争が 24 時間以内に起こる可能性があるとすでに言われています。

なぜなら、ヒズボラなどのイランの同盟組織が数万のミサイルでイスラエルを攻撃する可
能性が存在するからです。
イスラエルは、核を含む全戦力で自衛できます。
今、非常に危険な時です。
この事態はイスラエルの人々にとっても非常に困難で悲劇的な瞬間です。
市民の大量虐殺は本当に恐ろしいものでした。
私の叔父と叔母はテロリストによって攻撃され、壊滅したコミュニティの一つに住んでい
ました。
彼らは自宅に隠れていましたが、テロリストは家から家へと移動し、彼らの隣人を拷問
し、殺害しました。
彼らは何とか隠れて生き残りました。
テロリストは、市民を意図的に攻撃するだけでなく、彼らが考え得る最も恐ろしい方法で
子供たちを殺害し、それを公開しました。
その目的は、数百万人の心に憎悪の種をまき、和平のチャンスを全て潰すためでした。
この攻撃の背景には、イスラエルが平和条約に署名する寸前だったことがありました。
アラビアとの関係を正常化し、イスラエルとアラブ世界の関係を再開しようとしていまし
た。
そして、この戦争でイスラエルとパレスチナの人々が他の国々や全地域に影響を及ぼす可
能性があります。」

Q:ハラリさんは、人類は進化していくんだ、そして戦争はなくなっていくだろうという風 に本の中でおっしゃっていました。
歴史上、本当に大変な苦難を受けたイスラエル人が今回、現在の状態を考えると、報復の 結果としてガザにいる人々もまた苦難を受けています。この現実はどのように受け止めて いらしゃいますか。

A:「何十年も続いている暴力は現在エスカレートしており、主な問題は過去の傷を癒すの ではなく、過去の傷を相手を傷つけるため大義名分として利用することです。 歴史家として、これは”歴史の呪い”です。

みんな、未来ではなく、過去を救おうとしているのです。
過去に戻って何年も何十年も前の過去を正すことはできません。
必要なのは、未来に目を向け平和のために道を探すことです。

歴史を見ると、これはほとんど不可能に見えますが、私は長期的には不可能ではないと思 います。
なぜなら、80 年前、ユダヤ人はドイツ人、特にナチスによって何百万人も虐殺されました が、今日、ドイツ人とユダヤ人は良い友人です。 これが可能であれば、すべての傷が最終的には癒える可能性があると思います。

しかし、条件は、人々が過去をさらなる戦争や暴力の口実として使用するのではなく、癒
しに興味を持っていることです。」

Q:あの 今 イスラエルは報復の中で地上 侵攻 の もうほんと 手前のところ 寸前のところに いると思います 。
今 このタイミングでハラリさんにインタビューを聞けるということは本当にとても重要な ことだと思ってるんです。
けれども じゃあその地上侵攻、これ以上の報復 、ガザのその人道的な救い、この辺り こ れ以上の報復を止めることはできないんでしょうか。 イスラエルの人たちはそれをどう思っているんでしょうか 。

A:「ハマスとガザのパレスチナ人、特にガザのパレスチナの市民を区別する必要がありま す。 イスラエルは、ハマスというテロ組織に対して、市民や領土を守る権利があります。 この組織は再びすべての和平の機会を破壊することを目指しています。

平和を支持するすべての人々、私たちは守る必要があります。
イスラエルには市民の人権を守る義務があり、市民が戦闘地帯から移動できる方法を見つ
けることを願っています。
たとえば、エジプトはガザ地帯と国境を共有しており、戦争の間だけでも、ガザからの市
民を受け入れることができるはずです。
イスラエルが、ハマスを武装解除させるが、私たちは他国とあらゆる選択肢を考えるでし
ょう、民間人の命と人権をどうすればいいのかを。他の国々やイスラエルと共にあらゆる
選択肢を模索する必要があります。」

Q:あの、先ほどの番組で上級顧問のマーク・レイブにお話を聞きましたが、そこで、マー ク・レイブ氏は、『停戦はない、戦争における犠牲は避けられない』と話していました。 もちろん、ハマスの行動は非常に卑劣であると思いますが、現在のガザ地区にはハマスだ けでなく、罪のない人々もいます。 その中での犠牲を避けることは難しいと思いますが、それについてどう思いますか。

A:「イスラエルは、民主国家として国際法を遵守し、できる限り市民への被害を最小限に 抑えるという義務があります。

ガザ地帯の悲惨な光景に私も同情しますが、イスラエルが意図的に市民を殺すことを目指
しているわけではないことを理解してほしい。
彼らはその膨大な軍事力を慎重に使用しようとしています。
例えば、シリア内戦のアサド政権が意図的にできる限り多くの市民を殺害しようとした場
面と比較してみてください。
イスラエルはガザでそのようなことをしているわけではありません。
それにもかかわらず、イスラエルはその全ての作戦を制限し、市民の犠牲を最小限に抑え
る必要があります。」

Q:ちょっと世界に目を向けてみたいと思います。 イスラエルやユダヤ人にはその支持国、アメリカなどがあります。 そして、アラブ人やパレスチナにはそれを支持する周辺国があります。 この大きな対立についてはどう思いますか。

A:「非常に高い可能性ではありませんが、核戦争に非常に近い可能性があると思います。 これは世界中のすべての国にとって関心事でなければなりません。

『苦しみの海』に飲まれている人の心は、痛みで満ちているため、他の人々の痛みを感じ
ることができなくなります。
イスラエル人とパレスチナ人、両方に言えることです。
これは人間の心情に過ぎません。
しかし、ただ国外でくらしたり、ま中東に親族・友人もいない人々は、記事やテレビでし
か現状を知らないでしょう。
例えば、イギリスやブラジルや日本に住んでいる人々は、
テレビでの映像や物語を見るだけではなく、イスラエルとパレスチナ両方の視点から理解
する努力をしなければなりません。『知的・感情的な怠惰』に陥らないようにすべきで
す。
どちらかが『絶対的な正義』で、もう片方が『絶対悪』だと思い込まないようにすべきで
す。
現実というものの複雑性を把握するよう試みることが必要です。
状況をエスカレートさせるのではなく、戦争がさらに多くの場所や地域に広がるのを防ぐ
よう助けることが必要です。
これこそが外部の人の義務です。

Q:歴史学者として ハラリさんは アウトサイダーでもあったと思います。でも今回はまさにその当事者に今なられてると思います。
歴史学者として 当事者として本当に苦しいところだと思いますけど、 その被害を目の当たりにして苦しみで頭の中がいっぱいかもしれません。
けれども 歴史学者として 極めて冷静に今を判断するとしたらどんな風に言い表しますか。

A:「私の家族や友人にも大きな影響を与えています。 それは私の国だけでなく、非常に親しい友人や家族が深く苦しんでいます。 だから、現時点で私が客観的であることはできないと思います。

もちろん、このインタビューを見ている人にも、パレスチナ人などの異なる人々とのイン
タビューも見てほしいです。
信用できる情報には慎重になって結論を急がないようにすべきです。
結論を急ぐことなく、例えばガザの病院での恐ろしい爆発を見ると、最初はイスラエルを
非難する人々が多かった。
しかし、証拠が収集され、分析されたとき、少なくとも主要な専門家や主要な新聞のほと
んどが、イスラエル側の責任ではなく、イスラエルへ発射しようとしたところ、誤射で病
院に当ててしまったテロ組織のせいだと判断しました。
これは単なる1例に過ぎません。
双方の話を聞いて慎重に判断しなければなりません。
そして、外部の人には、どこかで見てきた動画などでなく、しっかりした根拠に基づいて
判断することが求められます。」

Q:長い歴史の中で、イスラエルの人々も、パレスチナの人々も、どちらも被害者だと思い ます。
憎しみと悲しみの連鎖があり、今も争いが続いています。 その憎しみの連鎖を解くヒントはどこにあると思いますか?

A:「歴史の中で、人々は同時に被害者であり加害者でもあります。 それを理解することは、和平を築くための重要なステップです。

少なくとも複雑な問題や長年続く争い事について、同じ人々が被害者と加害者両方である
ことがほとんどです。
歴史の事実は、複雑であると考えるのは平和への重要なステップです。
絶対的な正義を求める人々は、絶対的な正義がこの地球上では不可能であることを理解す
る必要があります。
中には、『絶対的な正義』を求めてしまう人もいます。地球上に『絶対的な正義』など存
在しません。『絶対的な正義』を求める人は、必然的に避けられない争いに引かれてしま
います。どんなことであっても、譲歩が全くできなくなってしまうからです。
歴史の中で結ばれたどんな平和条約も、常に妥協に基づいており、『絶対的な正義』を提
供するものではありません。
したがって、私たちは絶対的な正義の幻想を追求するか、平和のために譲歩する意思があ
るのかを選択する必要があります。
歴史学者としての答えは、明白です。譲歩しなければなりません。人類は、死後の世界で
の運命や絶対的生後といった妄想ではなく、今ここにある地球で生きなければならないか
らです。
このような状況で打開策に至るのは極めて難しいでしょう。
イスラエルは、サウジアラビアを介して和平合意という打開策の一歩手前でした。これが
ハマスの攻撃を招いたのです。
なので、ハマスを壊滅させることだけでは、不十分なのです。戦争の目標は、平和を築く
ことが可能になる段階へ導くことであるべきです。
これを達成するためには、ハマスを倒すだけではなく、パレスチナの人々が真っ当な生活
をできるようにすることが必要です。」

Q:今のイスラエル政府の報復の姿勢を見ると、その複雑さや、その歴史を顧みた迷いは感 じられますか?

A:「イスラエル政府やアメリカ政府の行動を観察すると、彼らはただ復讐を求めているわ けではなく、できるだけ多くのパレスチナ人を殺そうとしているわけでもありません。

目的はハマスというテロ組織を武装解除することです。
平和を求める人であれば、この目標に賛同すべきです。
なぜなら、ハマスは創立当初からイスラエルの存在する権利を否定し、平和に向けたいか
なる試みも意図的に妨害しようとしてきたからです。
オスロ合意も頓挫してしまいました。イスラエルーサウジ間の平和条約についても然りで
す。

イスラエルの目標は、単純に報復ではありません。ハマスがガザを支配する限り、10月7 日に誘拐された人質だけではなく、イスラエルとパレスチナ双方の人々をその宗教的妄想 のために人質にしているのです。

もう一つの勢力は、アメリカです。アメリカは膨大な軍事力を地域へ派遣することによっ
て、極めて強硬的に介入しました。これは良いことだと思います。
イスラエルに支援の態勢を示し、敵勢力からの攻撃の心配を軽減させ、さらにアメリカ側
にイスラエルを制御する正当性と信頼性を与えるからです。
私は、どちらの政府の代表者でもありませんが、イスラエル・アメリカ両方の政府が、軍
事的にハマスに勝利するだけでなく、将来的に平和の種を蒔くことを目的にしていると望
んでいます。
同時に、イスラエルの人々だけでなく、パレスチナの民間人を守る上で、彼らに尊厳ある
存在を将来約束する義務を忘れないことが必要です。」

Q:他のインタビューで、今回の事件はイスラエルの人々や政府の傲慢の代償でもあると話 していましたが、それについて教えてください。

A:「ハマスの攻撃の言い訳としては使えませんが、ネタニヤフと彼の政府の長年にわたる 政策には多くの批判があります。

ネタニヤフ政権は、パレスチナと真の平和を築く努力を怠ってきました。
ネタニヤフ政権は、イスラエルの占領に際して、ますます過激になり、時にはパレスチナ
人に対して人種差別的な態度をとったりしました。これは大きな間違いでした。
そして、ネタニヤフは国内で自らの権力を高めるための大衆迎合的な政策を進めました。
また、軍隊など自分に反対し、自分の権限を制する機関を批判しました。また、国家に仕
えるエリートを非難しました。最前線で国に仕えていた人を国家の裏切り者だと非難しま
した。
それにより、国家と機関が弱体化し、イスラエルの人々は、これらの多くの間違った政策
の代償を今支払っています。
もっと広く世界を見ると、イスラエルとパレスチナは、ここ10年の間違った政策のおか
げで、世界中で代償を払っています。
それは、自由で開かれた国際秩序を批判し破壊したことです。
ロシアや北朝鮮だけでなく、トランプ大統領でさえ、自由主義・国際秩序を非難し、秩序
を破壊すると残るのは、アナーキーやカオスです。ウクライナ侵攻や現在のハマスのイス
ラエルへの攻撃を見ると如実です。
国際協力と国際法に基づいて機能する国際秩序を作り直さない限り、残念ながら、こうい
った暴力行為は世界中中にもっと普及していくでしょう」

Q: 今回のその発信 メッセージによってイスラエル 国民の方にも 継承 鳴らしてるという風 にとっていいんでしょうか?

A: イスラエルにもパレスチナにも、そしてこの地域全体、さらには世界にとっても、 私が先ほど述べた自由で開かれた国際秩序の破綻は、そもそも何を基にしたものだったか を理解する必要があります。

リベラルな理想とは、全人類が基本的には同じだということ、
私たちは、同じ動物であり、同じ生物学的な体験を共有し、痛みを感じ、子どもを愛し、
親を愛すること、我々にはこうした共有体験に
基づいた保護すべき共通の利益と価値観があります。
これが自由で開かれた国際秩序の基本的なの基本的な考え方です。
今、この考え方が、ネタニヤフ自身を含む世界中の多くの人々、特にオルバン首相、ドナ
ルド・トランプ前大統領、ボルソナロ前大統領のような人々と同盟を結んだ人々によって
非難されました。
しかも、代案を示さなかった。
リベラルな価値観が好きではないのだとして、代案は何か。
もし国々がリベラルな価値観を基に協力できないのであれば、どのような代替的な普遍的
な価値観を基に協力すべきだと提案していますか?
彼らは何も提案していません。
そのため、今秩序が破綻しており、あるのは無秩序です。
私のメッセージは、イスラエルの人々だけでなく、世界中の人々に対しても向けていま
す。
。
もし私たちが秩序を再確立しなければ、今私の地域を破壊しているような暴力は、世界に
非常に早く広がる可能性が高い。
東アジアや世界の他の部分に非常に高い緊張が広がります。
もし私たちが何らかの機能する国際秩序に戻らなければ、私たちは恐ろしいグローバルな
無政府状態と戦争に陥るでしょう。

Q: 今のお話を聞いてると、 それこそ政治家に頼るだけじゃなく、
私たち 国民、人間一人一人が きちんと考えて、 物事を冷静に見るように物事は複雑なんだということを理解しながら考えていかなきゃいけないということでもありますか?

A: はい、どんな人でも、力を持っており、すべての人にはある程度の責任があります。 例えば、ソーシャルメディアで物事を見たり、メッセージを書いたりするだけでも影響が あります。

だから常に自分自身に問いかけてください。
あなたは世界にどのような種を撒いているのか、憎悪や暴力の種を撒いているのか、それ
とも慈悲と和解の種か。
そして、政治家たちは大きな責任を持っており、私たちは責任感のある政治家を必要とし
ています。
政治家を代替することはできません。
政治家は特有の職業であり、私は政治家になることはできません。それは特定の資格が必
要です。そして、行動に責任を取れる良い政治家が必要です。
しかし、誰でもこの世において一定の行動力を持っており、それに対する責任がありま
す。
今、世界では、多くの人が壁や境界線を作る必要性について語っています。
私たちは、私たちの心と口の間にも壁を建設する必要があります。
私たちの心に現れる考えや感情をコントロールすることはできませんが、口でいうことや
ソーシャルメディアで言うことはコントロールすることができます。それが私たちの責任
であるべきです。
特に政治家はそうであるべきです。
例えば、トランプのように、「本物」の政治家なのに、頭に浮かんだことをすぐに口にだ
す政治家もいる。
政治家は最初に心に浮かんだことを言うべきではない責任感が必要だ。
そして、私の心を見ると、私の心もゴミでいっぱいです。時々私の心は怒りや憎しみでい
っぱいです。
このようにテレビで何百万人もの人々が私たちを見ている時は、発言に注意しなければな
りません。
私の言葉が、多くの人の心に『憎悪の種』を植える可能性もある。
もし私が政治家であれば、責任はもっと大きく、数百万の心に種を蒔く大きな責任がある
でしょう。
しかし、もし私がただの一般の人で、テレビに出ない、大統領でもなくても、責任を持つ
必要があります。
心はコントロールすることは非常に難しいですが、しかし、何をいうか何を書くか、何を
するかについては、責任を持つべきです。

Q: ハラリさんはその著書で人類は進化する 戦争はもう起こらないんじゃないか っていう 風なことをおっしゃってましたけど、
本当に人類というのは でも難しくて複雑で愚かで、しかし、優しくて未来があるんだけど 難しいですね 本当に

A: 確かに、私は、それを10年以上前に、平和な時代に書きました。 しかし、それ以来、状況は本当に悪化しました。

私が言ったように、国際秩序に対する攻撃は、北朝鮮のような外の国家からだけでなく、
世界秩序を築いた米英からもありました。
今、私たちは歴史の異なる時代にいます。

COVID-19 のパンデミックで、私たちの共通の敵に対して結束する代わりに、十分な国際 的な協力が行われませんでした。

パンデミックが、人類全体にとっての危険であることに気づき、我々が、パンデミックに
対する警告と封じ込めの世界的なシステムを構築することを期待しましたが、できません
でした。
そして、パンデミック、ロシアのウクライナ侵攻、そしてハマスの攻撃が続いて、状況は
ますます悪化しています。
しかし、それを止める力はまだ私たちにあります。
人間の愚かさを過小評価してはならない。
これは歴史の中で最も強力な力の一つです。
歴史の中で最も大きな出来事は、人々が正しいことをするからではなく、何かが間違って
いるからです。
しかし、同時に、人間の知恵を決して過小評価してはなりません。
私たちは、正しいことをすることができます。
そして、繰り返しますが、これはまず第一に政治家の責任ですが、最終的には私たち一人
一人の責任です。

Q: あの 今 パラリさんがイスラエルからロンドンに移って来られて、 そして世界のメディ アにたくさん インタビューにもお答えになってます 。
今その どんな目的で何を一番 訴えたいと思って今こうやって答えてくださってるんでしょ うか。

A: 最も重要なメッセージは、この戦争をエスカレートさせないこと、そしてさらなる拡大 を許さないことです。

このインタビューの最初に私が言ったように、それは西岸やレバノンだけでなく、核戦争
に広がる可能性があります。
広島と長崎以来、初めて核兵器が戦闘に使用されるかもしれないのです。
なぜなら、核兵器を持つ数カ国がこの地域に存在するからです。彼らが存続の脅威にさら
されていると感じた場合、結果は壊滅的になる可能性があります。
ですので、もっとも重要なことは、何らか影響力を持つすべての国が、戦火の拡大を防ぐ
ことです。
繰り返しますが、『絶対的正義』を求めてはなりません。
それは今すぐには実現しません。
まず第1に戦火が人がることを防ぐことです。
ハマスはその攻撃に『トゥファン』というコードネームを与えました。そのコードネーム
はアラビア語で「洪水」という意味であり、それは聖書の洪水のことで、人類はほぼ全滅
します。
私たちはこの洪水がさらに多くの地域に広がり、さらに多くの人々を絶滅の危機にさらす
ことを防ぐ必要があります。

Q: 最後に、今日本は遠く離れています。 アジアの地でもニュースで連日のように、この イスラエルとパレスチナの問題は報じられています。
私たち日本にいるものたちができることは、ハラリさんから見て、どんなことがあります か?





A: 日本は、政治・経済・文化の力を利用して、この戦火のエスカレートを防ぐために行動 することでしょう。

あとは、苦しむ人たちに人道支援物資を送ることです。
避難民の数は、イスラエル国内で数万、がざ地区では数十万で、命の危険に晒され、恐怖
や苦痛と暮らす人は数百万人です。

だから、本当に重要なのは平和のための”スペース”をとっておくことが、もっとも重要な ことかもしれません。

なぜなら、申し上げたように、イスラエル人の心も、パレスチナ人の心も、今や完全に苦 痛のみになっているからです。 痛みについて語るにしても、イスラエルのことでなければ、頭に来るんです。『私たちが 感じている激しい痛みを知らずに、なぜパレスチナなのか。』 こういった状況では、平和のための”スペース”は生まれません。

苦海の海に浸りきりの私たちは、心に平和のための”スペース”がありません。 だから、皆さんで大切にしてください。

いつか私たちが平和の”スペース”に暮らすことになりますから。」


【 パレスチナ紛争の歴史的背景 】

以上が、ハラリのインタビューでした。

ここからは、現在のパレスチナでの戦争を考えるために、参考として、大雑把に歴史的背景をまとめてみます。

パレスチナは、エルサレム(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地)周辺の地域を表す言葉です。
ここに2000年前までユダヤ人の国がありましたが、ローマ帝国に滅ぼされ、ユダヤ人は追放され、ヨーロッパなど各地を放浪して生きてきました。
中世から近代にかけ、キリスト教のヨーロッパでは、イエスを殺したユダヤということで、差別・迫害されててきました。
その頂点が、ナチスのホロコーストです。

そんな中で、19世紀の後半、ユダヤ人(人種というより、ユダヤ教を信仰する人たちのことを言います)の中に、2000年前の故郷の地のパレスチナ=シオンの丘のある地にユダヤ国家を再建しようというシオニズム(シオンにちなんだ運動のこと)運動が始まります。
19世紀から20世紀、英仏の帝国主義が、中東(産油地帯)を自分たちが支配するために、この運動も利用していきます。
そもそも、パレスチナ地方は、7世紀以降、イスラムの国が支配し、英仏がやってくるまでは、オスマントルコ帝国が支配していました。
そこの住民は大半が、アラブ人でムスリムでしたが、ユダヤ教徒もイスラム教徒も長年平和共存していました。(イスラムの国では、きちんと税を収めていれば宗教には寛容でした。ユダヤ教もキリスト教も同じ神を信仰する経典の民として尊重されてきました。)

ところが、英が、第1次大戦の時に、アラブ人やユダヤ人に対して、オスマントルコとの戦いに協力すれば、国を作らせてあげるというような、矛盾するインチキな約束をそれぞれにしてしまいます。
特にシオニズム運動をしているユダヤ人を英国が利用するわけです。
第2次大戦後に、米英(アメリカもユダヤ系の資金の影響力が多い)が、バックアップして、アラブ人が住んでいるパレスチナにユダヤ国家を作るということを、国連の決定という形で認めます。その結果、1948年にイスラエルが建国されることになりました。
昔から住んでいたアラブ人に対して、「昔あったユダヤの国を再建するから、出ていってください」というわけです。
奈良や大阪で、「1800年前にあった邪馬台国を再建するから、あなたたちは出ていってください」と言われたら、どう思いますか?

イスラエルは、米英に支援された軍事力で、パレスチナのアラブ人を住んでいた土地から追い出しました。それに対して、周辺のアラブ人の国のヨルダン・エジプト・シリアなどが、パレスチナのアラブ人を応援して起きたのが、中東戦争です。
1948年の第1次中東戦争で、パレスチナの土地のかなりをイスラエルが確保しました。一方、エジプトが確保したのがガザ、ヨルダンが確保したのがヨルダン川西岸で、今のパレスチナ自治区の場所です。
この時、100万人近くのパレスチナのアラブ人が難民となり、ガザ、ヨルダン川西岸、そして周辺のヨルダン・レバノン・シリアなどに避難していくことになります。

その後、1973年の第4次まで中東戦争が続き、イスラエルは米英のバックアップを経て、その後も、パレスチナの自治区の土地まで、「入植」として奪い続け、ガザには高い壁を築き、パレスチナの人々を圧迫し続けています。詳しくは、資料をみていただけると分かると思いますが、歴史的には、イスラエルとパレスチナの戦闘では、圧倒的にパレスチナの側の死傷者が多い、非対称な戦争になっています。

こうした歴史を踏まえて、今回のハマスの戦闘を見ないと、いけないと思います。
確かに、もし、ハマスが民間人を殺害したとしたら、非難されるべきことですが、今回1400人を殺したハマスをテロリストと呼ぶならば、8000人以上(10/27までの報道による)を殺したイスラエル国軍もテロ集団といわなければ不公平です。

でも、そんな言い合いをしても解決できない、一方の側が、「絶対的被害者」「絶対的加害者」「絶対的正義」と主張し合うことでは、解決できない。そんなことをハラリは、イスラエルの立場から言っていて、お互いに譲歩しあって、戦闘をエスカレートさせるのではなく、和平の道を探ろうといいうことをいっているのだと思います。

そして、最悪、中東が第5次中東戦争になると、核戦争の危機が迫っているとハラリは警告しているのだと思います。

私たちは、日本から、パレスチナの停戦を呼びかけるように、世論を作っていく必要があるかとは思います。
世界では、結構、「パエスチナに平和を」の声が上がってきています。

何かできることを考えたいですね。

パレスチナの戦争の資料です。
とてもわかりやすいです。

内田樹先生と池田香代子さん(「もし世界が100人のムラだったら」の作者さん)の対談です。
https://youtu.be/qBEq2mp9pXM?si=CXMLKbwow19BXwG4


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