入試現代文:小説問題の解法

 皆さん、おはようございます。こんにちは。こんばんは。大学受験パーソナルラボLEAD国語科の桝崎徹です。

 桜の季節も早くも終わろうとしています。僕の家の近くの奈良公園の桜もアッという間に散り始めています。狂ったように咲き、そして散っていく桜。なんとも言えない心情になってしまします。

・・・さぁ、この“心情”という言葉。これも入試現代文で見かける言葉です。

 今までは「評論文の問題文の読み取り方」について書いてきましたが、今回は「小説問題の読み取り方」について書いていこうと思います。しばし、お付き合いくださいませ。

小説問題で何を読み取るの!?

 評論文の問題文から読み取るべきものが「筆者の主張」であるということは何度も書いてきました。これに対して、小説問題ではなにを正確に読み取らなければならないのでしょうか?作者の壮大な文学観でしょうか?あるいは世界観?テーマでしょうか?

 たしかにそれらも重要です。しかし、それらは長い小説の冒頭部分から最後まで読み通して発見、理解できるものです。入試現代文は、ほぼ、長い小説の一場面を切り取って作成されたものです。中にはその一場面で上記に書いたものが問題として問われることもあるかもしれませんが、主に試験で問われるものは、今回の冒頭部分で書いた、“心情”です。誰の心情?“その問題文を読んでいる皆さんの心情”ではありません。小説問題で読み取らなければならないのは“登場人物の心情”なのです。

どうやって“登場人物の心情”を読み取るの!?

 ・・・いやいや、無理でしょう~。登場人物の気持ちになるんですか~?その一場面を書いた作者の気持ちになるんですか~?

 はい。それらは無理です。(実際に入試現代文で使用された小説の作者が「この場面の主人公の心情は、模範解答のような心情ではない!」と文句を言いに来ることはあるんです。あるいは、作者がその問題を解いてみて、全然答えが合わなかったとか。それほどまでに、入試現代文の小説問題の読み方は文学的センスや、作者の文学観というようなものに頼ってはいけないんです。)

・・・ではどう読んでいかなければいけないのか?

 小説問題は、登場人物の心情を客観的に把握しながら、読んでいかなければいけません。

・・・また出たぁ、客観的・・・。もうええわぁ~。というような声も聞こえてきそうですが、まぁまぁ、先を続けます。

それでは、当然出てくる質問ですが、「ほな、どうやって、“客観的に”読んでいきますねん!?」となりますので、順を追って書かせてください。

① 直接的心情表現

 まず、これです。いきなり例題です。

●例題 次の文章を読んで、後の問いに答えよ。

 トオルはうれしかった。大学に合格したのである。人目をはばからず、スキップしたいような心情であった。

問 この場面の「トオル」の気持ちとして最もふさわしいものを次の(1)~(3)から一つ選べ。 

   (1) うれしかった    (2) 悲しかった    (3) 怒っていた

・・・どうでしょうか?答えは、(1)「うれしかった」です。なぜなら、一文目に「トオルはうれしかった」と書かれているからです。

・・・バカにしとんのかぃ!当たり前やろ!こんなん、間違うかいっ!!・・・と言われるかもしれません。お怒りはごもっとも。いや、それでも、これ、大事なんです。直接的な、そのまんまの表現を無視して、どこかに自分の感性を通して読んでしまう人は必ずいるんです。「・・・いや、大学を合格したくらいで、そんなうれしくはならんやろ。」というような。この短い文章でそこまで自分の主観を入れる人はいないかもしれませんが、文章が長くなるにつれて、“主観・感性”のようなものを入れながら読んでしまいます。そうして読もうとする限り、いくら問題演習を重ねたところで、はっきり言って、無駄です。何を隠そう、高3の受験時の自分がそうでしたから。このブログでも以前に書いたと思いますが、模試を受けている最中、その小説問題の文章があまりに感動的であったので、試験問題を読みながら泣いていました。それではアカン!と気付けはしましたが、無駄な問題演習を重ねておりました・・・。

 整理します。

 「問題文中の“直接的な表現”には線を引く!」です。“直接的な表現”とは、具体的に喜怒哀楽を表す言葉形容詞、また、“~と思った”“~と考えた”などですね。

・・・さて、しかし。普通、作家さんが登場人物の気持ちを表現するのに、「トオルは悲しかった」や、「トオルは、怒っていた」というような書き方をするでしょうか?(あ、太宰治の『走れメロス』の有名な書き出し、「メロスは激怒した。」ほどのものは別だと思ってくださいね。)

 普通、しません。逆にしてくれていたら、その問題を解く方の身になればラッキーなのですが、悲しいことに、そんなわかりやすいものは試験問題になりません。作家さんは登場人物の心情が悲しみだとするなら、悲しいと一言も書かずにそれを表現するはずです。そして、そういった箇所が主に設問となります。「悲しい」と書かれた箇所に傍線部があり、「その時の心情を説明せよ」なんていう問題も、普通は考えられません。

・・・ほな、どうしますんや?ということで、次です。

② 動作

 映画やテレビドラマを思い浮かべてください。主人公が恋人の死の知らせを聞いて、突然持っていたグラスをガチャンと落とすというシーンがあったとしたら、そのグラスをガチャンと落とすという“動作”で主人公がショックを受けたことを表しています。(・・・ちょっと記号的な演技すぎますけどね・・・。うまい役者さんは、多分、こんな演技をしないでしょう。例えば桃井かおりさんなら、笑いながら涙を流したり・・・。他の役者さんで言えば・・・と関係ないことばかり書いていきそうなので、止めておきます。)

 これは映像を使った喩えですが、文章になっても同じです。動作によって作者は感情を表す言葉を使わなくても、登場人物の心情を描きます。小説問題を読み解く皆さんは、この部分に注意しなければいけません。

 例えば、以下のような小説の一場面があったとします。

トオルは新宿駅東口前の喫煙所で五本目の煙草に火を付けながら、スタジオアルタの大画面に表示されている時計を見た。自分が人を待たせることは多いが、自分が一時間待たされたことは初めてだった。貧乏ゆすりが止まらない。舌打ちをしながら、手は既に六本目の煙草を取り出そうとしていた時、スマホに着信があった。カオリからではなかった。登録されていない番号だ。ややためらいながらも、

「・・・はい。」

「あ、マスザキトオルさんですか。」

「・・・はぁ。」

~(中略)~

 このような文章があった場合、「一時間待たされた」「貧乏ゆすり」「舌打ち」のような動作に注意できているかということです。そこから導き出せる、この場面での登場人物「トオル」の心情は、必然的に「イライラしている」「怒っている」などになるはずです。

③ セリフ

次の「登場人物の心情を正確に把握する」ためのポイントは、「セリフ」です。

その言葉自体が、その人物の気持ちを表現していることは日常生活でもよくあることだと思います。ただ、注意しなければならないのは、「その言葉だけ」で判断してはならないということです。

必ず傍線部前後に、心情を表す根拠があるからです。

たとえば。例題で確認しましょう。上記の場面の後です。

先ほどスマホにかかってきたのは救急病院からでした。トオルを一時間待たせたカオリは、なんと交通事故で即死してしまったという内容の電話でした。以下はその後です。(・・・なんという安直な展開なのでしょう。なお、内容は一切フィクションです。いちいち書かんでもお分かりでしょうが・・・。)

●例題 次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。

カオリが死んだという電話を切った後、トオルはぽつんと「ええ気味や」とつぶやいた。カオリとは結婚の約束していた。バイトの金を少しずつため、新しいアパートの引っ越しの準備までしていた。だが、いつの間にか、その約束は反故にされてしまった。それがだいたい半年前で、今日は半年ぶりに会うLINEをカオリの方から送って来たのだった。そんなカオリが交通事故で即死した。心の中で「ええ気味や」を繰り返していたが、なぜか涙が頬を伝わっている。「なんでやねん。違うやろ」と口に出してみた。これが涙が勝手に流れていることに対してのツッコミなのか、カオリの死に対してのものなのか、自分でもわからなかった。分かったのは、自分がまだ女々しくも、カオリのことを愛していたということだけだった。

問 ―線部「ええ気味や」とあるが、この時のトオルの気持ちとして、最も適切なものを次の(1)~(3)から一つ選べ。(※なお―線部「ええ気味や」とは関西弁の方言で、標準語的には「ええ気味だ」となる。)

  (1) 悲しみ      (2) 喜び     (3) 怒り

・・・いかがでしょうか。答えは、「(1) 悲しみ」です。

確かに「ええ気味や」という言葉だけなら、「ざまぁみろ」という意味合いで、「(2) 喜び」になるかもしれません。「なんでやねん。違うやろ」をいう別の個所にあるセリフを判断の根拠とおくのであれば、「(3) 怒り」と解釈できるかもしれません。しかし、どちらとも、「登場人物の心情を客観的に表現する根拠」とはなっていないのです。

 この例題の場合、「なぜか涙が頬を伝わっている」という動作や、「自分がまだ女々しくも、カオリのことを愛していた」という直接的な表現を根拠に置かなければいけないのです。

3.5  因果関係

また、心情は評論文でやりました、「因果関係」を捉えることも重要です。これは古文の読解にも役立つことですが、「なにか起こる」(原因)➡「登場人物の反応」(結果)というカタチでと捉えることができます。「登場人物の反応」(結果)=心情という公式が成り立ちます。

上の例題の場合、「カオリの死」(原因)➡「トオルの悲しみ」(結果)となりますね。

④ 情景描写

 最後は、コレです。「情景」とは、「風景」と「心情」が一緒になったような言葉だと思ってください。「どんなシーンなのか」ということです。そのシーンは、登場人物の目に映った主観的な風景なので、そこには登場人物の心情が投影されているということです。

①「トオルは曇天のもと、下を向きながら歩いている。前を向いても、行きかう人々もどこか、この曇天に押しつぶされているように見える。通り過ぎた公園のさび付いたブランコが語りかけてくる。」

②「トオルの今日の世界は、明るかった。意識はしていないが、歩調は速くなる。先ほど、妻が無事に出産したという電話を受けた。」

 上の①と②の文章を読み比べてもらったら、分かりますね。①はどう読んでも、全体的に「暗い」イメージ。②はどう読んでも、「明るい」イメージです。これは直感ではありません。①の「下を向きながら歩いている」という行動。「曇天」「さび付いたブランコ」という情景描写から。②は「明るかった」という直接的な表現。「妻が無事に出産した」という「原因」。それらが織りなす全体的な「情景描写」からです。

 これが常に「登場人物の心情」の投影になっているということに注意してください。

まとめ

●自分の感性を排除し、問題文を客観的に読んでいく訓練が必要です。

●そのためには、登場人物の心情を表す、「動作」・「セリフ」・「情景描写」をすべてチェックしてください

●登場人物の心情は、そのチェックした部分の前後の根拠から、これまた客観的に判断してください。

最後に

 ・・・いや、まとめの後にまだ書くんかいなぁ~。・・・すいません。書きます。

最後に、今回書きました内容は、あくまでも、「入試現代文の小説問題を読み解くには」が目的です。普通に小説を読むときは、自由に想像力の翼を広げて、好きなように読んでくださいね。そして楽しんでくださいね。誤読はよくないでしょうが、それで点数を引かれたり、不合格になるということはありません。普通に小説を読むという行為と小説問題を解くという行為は全く別物だということを、もう一度、確認しておきたかったのです。


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