現代文 本文の構成を見抜け①

国語科:桝崎 徹

皆さん、おはようございます。こんにちは。こんばんは。大学受験パーソナルラボLEADの国語科、桝崎徹です。

共通テストも終わりましたね。
結果は人それぞれ様々であったでしょうが、自分の目標まであと一息です!

頑張るな!平常心でいけ、受験生!
(前回のブログの最後を「頑張れ!受験生‼」というどこにでもある、使い古された大手予備校のコピーのような終え方をしまして、反省しているんです。それのみならず、書き出しを「平常心を保つために」と書いておきながら、「頑張れ!」はないだろうと・・・。)

現在は私立大学入試のさなか、また国公立大学二次試験への最終調整真っ盛りだと思います。今日、この時にも、なかなか難しい現代文の文章を読んでいることだと、(読まされていることだと)思います。

いや、ホントに、難しいですね。このブログの最初の方でも言っていましたのは、「一つの文章の中に筆者の主張は1個。多くて2個」ということでした。大切なことが、まとめれば1個か2個で終わってしまう文章を、入試現代文の筆者さんはどうしてだらだらと、しかも難しい言葉を多用して、回りくどく書いていくのか・・・‼・・・そんな感想をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

しかし、この、“だらだら長い”、“回りくどい”は今回のテーマに大きく関わってくるところなのです。

筆者の使うテクニックを意識して、「主張」を読み取っていこう‼

現代文の筆者は、「皆さんにこのことを言いたい!わかってもらいたい!」という思いで、文章を書いています。(決して大学の入試問題を作ろうと思って書いているのではありません。) 

そして、現代文の入試問題は、その筆者の言いたいこと=「主張」をきちんと読み取っているかどうかを試しています。(※それが設問に出る、出ないは関係ないのです。この主張を正しく読み取れていたら、ブレることはありません。)

このブログでも散々登場してきていますこの「主張」を、では、どのようにしてとらえていけばいいのでしょうか?一文を正確に読み取るという基本的な大前提は以前に書きましたが、今回からは、もう少し視点を広げていきたいと思います。

筆者の主張をとらえるためには、筆者が主張を伝えるときに使う「テクニック」を発見することが大事です。
(このあたりが“筆者の意識で問題文を読む”というところに関わってきます。)

簡単に言うと、「文章の構成」です。「文章と文章の関係」です。(ちょっとカッコつけていうと“レトリック[=修辞法/説得法]”なんかになるのですが、そうなると文章の表現の“技法”(たとえば比喩や問題提起、譲歩など)に限定されてしまうおそれもありますので、少し大きく「構成」としておきます。)

皆さんも、自分の言いたいことが相手にうまく伝わらないときに「なんで、わからへんのよ~‼」という悔しい思いをされたことがあるはずです。そんな時、いろんな方法でわかってもらえるように努力しますよね。

たとえば、僕なら・・・

宮﨑駿監督作品『ルパン三世~カリオストロの城~』の素晴らしさ(=主張)を分かってもらうために、僕は実際に映画のワンシーンを再現します(=具体化)。

自分がこの映画を初めて観た時と42歳の今観るときとの違いを語ります(=体験+受け取り方の対比)。

この映画をいいと判断する根拠を滔滔と語りだします(=因果)。

「いや僕だけがいいって言ってるんちゃうねん。あのスピルバーグ監督も、映画撮る時、特にアクションシーンに悩んだ時、この作品のカーチェイスのシーンを見直すって言うてはんねん。あと黒澤明の『七人の侍』と『隠し砦の三悪人』な。」と言います(=引用(+自分の映画知識のひけらかし))。

また、「いや、確かにディズニー作品もいいと思うよ。これだけ支持されてんねんから。でもさ、ディズニー作品って、入口と出口が同じ感じがすんねんな。観る前と観終わった後の、自分の中の視点が変わってないっていうか。その点、宮﨑駿作品は・・・」とも言います(=対比+比喩+譲歩+パクリ(この「入り口と出口が~」の感想自体、若いころの駿さんのコメントですから・・・。))。

・・・こんな具合に。聞かされている方は、あきれ顔かもしれませんが・・・。

現代文の構成はたったの三つだけ⁉

・・・また例によって、マニアックな具体例を長く書いてしまいましたが、人が自分の頭の中にある考え(=主張)を、文字や言葉で伝える方法は大きく分けて三つしかありません。この際、割り切ってください。その三つとは、

Ⅰ 言い換え(イコールの法則)

Ⅱ 対比(比べる法則)

Ⅲ 因果(たどる法則)

です。

今回は、言い換えに的を絞り、うんちくをたれていきたいと思います。しばし、お付き合いくださいませ。(やっとこれからが本題なのでありました・・・。)

先に書きました、入試現代文がだらだら長い、という原因の一つは、この「言い換え」にあります。

なぜなら、筆者は、伝えたいことを、形を変えながら、何度も繰り返すからです。

言い換え(イコールの法則)にはどんなものがあるの⁉

1.具体(化・例)=抽象(化)

2.体験(談)

3.引用

4.比喩

などです。

2.体験(談)、3.引用、4.比喩は上記の「ルパン三世~カリオストロの城~」の例でもdしていますから、今回は特に、イコールの関係で一番基礎であり、超重要となる1.具体(化・例)=抽象(化)を中心に書かせてください。

具体(例)=抽象

言い換える表現の基本となるものです。

皆さんの日常会話でも、これはよく使われていると思います。また逆に、こちらの思いが相手にうまく伝わっていないときなどに、「・・・ちょっとよぅわからへん。もうちょっと具体的に言うてや。」というような会話があると思います。日常会話だと、相手も聞き返してくれます。しかし、書かれた文章となると読んでいるこちら側は筆者に聞き返すことなどできません。ですから筆者も読者に充分に伝わるように「論理」で伝えます。

その際に大事なことは、「抽象=具体」の関係です。抽象と具体という言葉自体は対義語(反対語)ですが、その関係性は「イコール」の関係だということです。

具体(例)=抽象の目印は?

目印になってくれることばは、

つまり・たとえば・このように・要するに」などです。

 実際に、みていきましょう。

 下記の[    ]にどんな言葉を入れますか?

 ・みかん、りんご、バナナ。つまり、[    ]。

 [    ]。たとえば、みかん、りんご、バナナ。

 答えは。果物。ですね。

これは単語の羅列でしたが、文章になると、どうでしょう。

・僕の将来の夢は[     ]になることだ。たとえば、野球選手、サッカー選手、水泳の選手などだ。

答えは、スポーツ選手。ですよね。

ここで大事なことは、「たとえば」の後は「具体」(=前は抽象)

「つまり」の後は「抽象」(=前は具体)

ということです。それ以上に大事なことは、その前後の関係は「イコールの関係」だということです。

※“抽象”という言葉の意味について、“抽象画”や“その言い方は抽象的すぎる”のような使われ方が多いので、“なんかわからんもの”と受け取っている人が多いようですが、“抽象化”とは、“それぞれに共通の要素を抜き出す”ということです。具体化はその逆。
「俺、動物が好きやねん。たとえば、イヌとか。」ですよね。「俺、動物が好きやねん。たとえば、スイカとか。」という話を聞かされたら、「・・・あ、この人・・・。」となってしまいますね。

この、「つまり」と同じ働き(抽象化しながらイコールの関係を作る働き)があるのが、「このように」「要するに」「すなわち」「いわば」「言い換えれば」「別の言い方をすれば」「これらの例からいえることは」などで、筆者によって多くの表現が使われます。

 (どうでもいいことかもしれませんが、身近に、「要するに」と言ってから、べらべら長く喋りだす人がいせんか?抽象化してるんですから、「要するに」のあとは、短く、ほぼ一言で終えなければならないんです。そんな人は、だいだい自分の喋りに酔っているだけの人です。もし、そんな人がいたら、大きな声で言ってあげましょう。「あんた、「要するに」、の使い方、間違ってんで‼要するに、あんた、アホやで。」と。)

目印の言葉がなくても「イコールの関係」はあります

・・・そんなんズルいやん・・・と言われそうですが、次の文章がその例です。

・社会とは何か。社会とは、「人間の集まり」を指す言葉である。

・「人間の集まり」を指す言葉。それが社会である。

 この二つの文章は全く同じ内容を表現していますね。「Aとは、Bである。」「B。それがAである。」このような形の文を「定義」の文といいます。テーマとなるAの意味を抽象的に言い換えた「まとめ」の部分です。
ここにこそ、筆者の主張があります。

抽象にこそ、筆者の主張がある。
体験も踏まえて。

これ、大事なんです。読み取るべきものは、具体ではなく、抽象なんです。

小学生でも中学生でも高校生でも、国語が苦手な子に多いのは、具体の方に目を奪われてしまうという傾向です。しかも、それを単独で(主張とイコールだということも無視して)、筆者の意図も考えず、抜き出してきてしまう。

たとえば(あ、桝崎、具体例を出してしまいます。)、「戦争はいけない。」という筆者の主張があるとします。
ですが、それを、「戦争はいけない。戦争は人類の敵。戦争は平和の敵。だから、戦争はダメなんだ!」といい続けられても、「・・・いや、それはわかるけども・・・。」という反応になってしまいます。
そこで、実際に戦争に行かれたお爺さんが、戦争中の悲惨な体験を涙ながらに語られたとする。
(実際に僕のおじいちゃんは戦史上最低といわれたインパール作戦から生きて帰ってきた人でした。僕は夕食を食べ終えたおじいちゃんが地球儀を持ちながら、本当に涙ながらに語る戦争の体験談を聞いて育ちました。)

そうなると、どうでしょうか。そのお爺さんの体験談はきっと聞く者の胸を打つでしょう。

 そうなんです。感動するのは、心を打つのは、印象に残るのは、具体的なことなんです。

しかし、ここで注意しなければいけないのは、入試現代文で読み取るべきことは、そのお爺さんの具体的な体験談ではなく、「戦争はいけない」という筆者の主張なんです。

お爺さんの体験談≦「戦争はいけない」なんです。

イコールの関係のその他

また、こんなのもあります。

以下の各文で正しいものはどれでしょう。

(1)動物というライオン

(2)チャンスという敗者復活戦

(3)太陽はみかんのようだ、というたとえ

(4)鉛筆などの文房具

(5)木へんがつく漢字などの林や板

どうでしょうか?正しい表現は、(3)と(4)です。

これは「AというB」「AなどのB」のとき、Aは具体、Bは抽象という関係性を見抜けているかどうかにかかっています。
一文だけに注目しても、具体的な部分と抽象的な部分の両方がある、ということを理解しましょう。それが段落の中の関係性につながっていき、それが段落同士の関係となり、最終的には、それらの関係性が筆者の主張へとつながっていきます。

実際の入試現代文の文章から

下記の文章は先日の2021年共通テスト国語第1問の3段落の文章です。がそれぞれ、言葉は違うけれども同じ意味(=イコールの関係)です。

『①妖怪はそもそも、日常的理解を越えた不可思議な現象意味を与えようとする民俗的な心意から生まれたものであった。
②人間はつねに、経験に裏打ちされた日常的な原因―結果の了解に基づいて目の前に生起する現象を認識し、未来を予見し、さまざまな行動を決定している。
③ところが時たま、そうした日常的な因果了解では説明のつかない現象に遭遇する。
④それは通常の認識や予見を無効化するため、人間の心に不安と恐怖を喚起する。
このような言わば意味論的な危機に対して、それをなんとか意味の体系のなかに回収するため生み出された文化的装置が「妖怪」だった。⑥それは人間が秩序ある意味世界のなかで生きていくうえでの必要から生み出されたものであり、それゆえに切実なリアリティをともなっていたA民間伝承としての妖怪とは、そうした存在だったのである。』

現代文の場合、文章は縦書きなので、皆さん、重要なところに縦の線を引かれますが、それ以上に、言い換えを表す(イコールの関係を表す)、横の線も大事なんです!(今回は横書きなので、縦の線になってしまいますが。)

問題文を見ていきましょう。

①は“抽象”ですね。自分でやっていて、改めて気付かされたのですが、この①の文には、それ以下に続く文の、すべての三色が入ってますね。

ついでに、設問にも答えてしまいましょう!

問2 傍線部A「民間伝承としての妖怪」とは、どのような存在か。その説明として最も適当なものを、次の①~➄のうちから一つ選べ。

(1)人間の理解を超えた不可思議な現象に意味を与え日常世界のなかに導き入れる存在。

(2)通常の認識や予見が無効となる現象をフィクションの領域においてとらえなおす存在。

(3)目の前の出来事から予測される未来への不安を意味の体系のなかで認識させる存在。

(4)日常的な因果関係にもとづく意味の体系かのリアリティを改めて人間に気づかせる存在。

(5)通常の因果関係の理解では説明のできない意味論的な危機を人間の心に生み出す存在。

・・・いかがでしょうか?解けましたか?もちろん、選択肢問題ですから、消去法でもいいのですが、まずは積極法で、正攻法に解いてみましょう。いや、解ける問題です。この段落はきれいに「抽象➡具体」の流れです。先に確認しましたが、見事な「イコール関係」で成り立っている段落です。

また、これは今後、「現代文の解き方」でお伝えすることになりますが、この問題に限らず、傍線部の中、あるいは前後にある“指示語”は超重要です‼この指示語が、文中の言葉の意味を限定しているのですから!この場合だと、傍線部の後の、「そうした存在だったのである。」の「そうした」ですね。この「そうした」はどこを指しているのか?

指示語の指示内容は直前から検討していくのが鉄則です。直前となると、⑥の文です。この文は具体です。しかし、すべてイコールですから、抽象に戻っていき、⑥=①となります。①の文の内容に一番近い選択肢はどれでしょうか?

はい。(1)です。消去法を使わずとも解けますね。

(※選択肢問題の選択肢の吟味の仕方については、また今後、書かなければいけないと思っていますが、国語力をちゃんと(・・・・)上げて(・・・)いこう(・・・)と思っている方は、「設問だけ見て、いきなり選択肢の吟味に入る」というような解き方は、絶対にやめましょう。その判断の根拠はどこにあるんですか?選択肢同士を見比べて何がわかるんですか?答えの根拠、判断の根拠はすべて、本文にあるんです。)

さいごに

今回はかなり長くなってしまいました。(自分で入試現代文はだらだら長いなどとかきながら・・・。)

まとめです!

なんとなく難しい書き出し出しの文章(=抽象的な文章)だと思ったら、“筆者は必ずどこかで具体例を示してくれる!”と信じて読んでください。また逆に、長~い具体例が連ねられている文章に出会ったら、必ずどこかで、まとめてくれる(抽象化してくれる)と信じて、読み進めてください

僕自身もいつも使う手です。だから、保証いたします!いや、そうしないと読んでいけない・・・。

最後まで読んでくれたみなさん、よく付き合ってくださいました。ありがとうございました。

次回は、三つの構成のうちの二つ目、「対比」です。

(・・・次回はもう少し短めにまとめますから・・・。)


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