第6回 ハラリ「21Lessons」を読む教養ゼミ
*LEAD 2020年度教養ゼミ
*10月18日(日) 13時開始〜15時終了予定
*今回読む章
Ⅱ政治面の難題
9 移民
文化にも良し悪しがあるかもしれない
Ⅲ絶望と希望
10 テロ
パニックを起こすな
*ズームで実施します。
9 移民
ハラリは、9章の冒頭にこう述べています。
「(グローバル化の中で、現代世界の)政治制度や集団的アイデンティティには無理が来ている。・・・この問題が最も差し迫っているのがヨーロッパだ。EUは、フランス人、ドイツ人、スペイン人、ギリシア人の間の文化的な違いを乗り越えるという名目の下で築かれた。ところが、ヨーロッパ人とアフリカや中東からの移民と文化的な違いをうまく消化し切れないため、崩壊するかもしれない。」
こう問題提起して、ハラリは、今日の世界の分断・対立か、それとも世界的な連帯かを左右する大きなデーマとして、移民の問題を焦点としてEUの分裂か連帯かを考察していきます。
まず、移民賛成派、反対派の議論を、「移民受け容れは義務なのか恩恵なのか」「移民には同化がどの程度求められるのか」「受け入れ国は、どれだけ早く移民を国民として扱うべきなのか」「受け入れ国・移民の双方が、義務を果たしているのか」の論点から考察していきます。
その上で、移民をめぐる議論の根本問題として「人間の文化を私たちがどう理解しているかー対等と考えるのか、文化に優劣があると考えるのかー」について考察を進めます。
その上で、ハラリは、「移民をめぐる論議は、2つの正当な見方の間の論議であり、通常の民主的な手順を踏んで決着をつけることが可能だし、そうすべきでもある。」と提起しています。
そして、最後にこう指摘しています。「ヨーロッパが、外国人に門戸を開いたままにし、しかもヨーロッパの価値観を共有しない人々によって不安定にならずに済むような中道を見つけ出せるかどうかは、今のところまったく定かではない。もしヨーロッパがそのような道をうまく見つけられれば、その処方箋は、グローバルなレベルでも真似できるかもしれない。逆に、このヨーロッパの試みが失敗に終われば、自由と寛容という自由主義の価値観を信奉するだけでは世界の文化的対立を解決できず、核戦争と生態系の崩壊と技術的破壊を前にして人類を統一できないということになる。」
以上のように、ハラリは、Global Solidarityを追求する上で、ヨーロッパにおける移民の問題が、人類的な課題であることを展開しています。
私たちも、ここで問われている移民・難民、そして文化差別の問題をどう考えるのか、どういう態度をとるべきなのか、ハラリの提起を踏まえ、じっくり考えていきたいと思います。
また、最終段落で、ハラリは次章への問題提起をしています。
「ヨーロッパと世界全体をもっとうまく統合し、国境も心も開いておくために一つできるのは、テロに対してヒステリックにならないことだろう。ヨーロッパが行っている自由と寛容の実験が、テロリストに対する過度の恐れのせいで駄目になれば、それはなんとも不幸な話だ。」
Ⅲ 絶望と希望
ハラリは言います。
「直面している難題は前例のないものだし、意見の相違ははなはだしいが、人類は恐れに己を見失わず、また、もう少し謙虚な見方ができれば、うまく対処できるだろう。」
10 テロ
ハラリは、ヨーロッパ(ひいては世界)における自由と寛容が進展するためには、テロに「パニックを起こすな」と呼びかけています。
「テロは、・・・恐れを広めることで政治情勢が変わるのを期待する軍事戦略だ。・・敵にたいした物質的損害を与えられない非常に弱い集団が採用する。」
「テロの成否は私たちにかかっている。もし私たちが自分の想像力をテロリストが捉えるのを許し、それから自分自身の恐怖心に過剰に反応すれば、テロは成功する。もし、自分の想像力をテロリストから解放し、釣り合いの取れた、冷静な形で反応すれば、テロは失敗する。」
つまり、ハラリは、テロを理由に移民を排除するのではなく、自由と寛容のヨーロッパや世界を切り開いていくことはできるという方向性を示しています。
現代世界の課題を考えよう!
以上のように、今回のゼミで読む「移民」と「テロ」も、人類が、今や単一の文明の世界に生きているにもかかわらず、日々のニュースで接しているように様々な要因から分断が見受けられてしまう今日の世界の根底にある問題を考える章になっています。
コロナパンデミックで、一層、世界の協力が必要になっているにもかかわらず、各地で続く分断・対立を私たちはどう解決して「Global Solidarity」を実現していけばいいのか。
このことをしっかり考えていくために、今回の『21Lessons』の9章・10章をじっくり読んで、考えていきましょう。
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