世界の大きな影に飲み込まれず、意識して光に転ずる道を、生活の場から歩み始めよう!

2016教養ゼミ総括&来年度のプラン

20161120  岩崎美好

1、今年度総括

 エーリッヒ・フロム「自由からの逃走」を昨年に続いて、最後までやりきり読了しました。また、その延長で、フロムと同じく30年代のドイツでユダヤ人としてナチスと対峙し、戦後も全体主義と格闘を続けたアンナ・ハーレントを読んできました。

 参加された皆さんそれぞれに掴んでいただいたもの、感じてもらえたところはあると思います。

 私といたしましては、今の状況の中で、フロムとアーレントを勉強できたこと、みなさんと論議できたことが本当に良かったと強く感じています。

 なぜかと言いますと。

 先日のトランプ氏の大統領選勝利は、ある意味戦後の世界体制が根本的に転換を迎えているように見えます。グローバリゼーションの中心であったアメリカが、そのグローバリゼーション故に行き詰まって、格差が拡大し、白人中間層以下の生活がままならなくなり、従来のグローバリゼーション路線から保護主義的な内向きな経済・政治政策—世界の警察の役割からの撤収をせざるを得なくなっています。もはやアメリカは、戦後果たしてきた世界のリーダーとしての役割をよくも悪くもできなくなってきたということでしょう。その過程で、30年代のナチスの再来を思わせるような、とんでもない差別・排外主義が吹き出してきています。

 エマニュエル・トッド氏は、この状況を「グローバリゼーションの終焉」と規定しています。終焉がどうかは、もう少し状況を見ていく必要はあると思いますが、世界が大きな転換点にきているとは感じられます。

 この状況で、アメリカでそうであるように、あるいはイギリスのEU脱退の動きでもそうであったように、世界的には、グローバリゼーション(国境の壁を低くすることによって、一方では世界の人々のつながりは広がったが、一方では格差の拡大、中間層以下の生活状況の悪化をもたらしてきた。)への反動として、ナショナリズムが強まっていく傾向が見えてきました。

 英米で期待されているのは、ナショナリズムの光の側面として、自国民の生活や産業を保護することだと思います。しかし、ナショナリズムは、気をつけないとその影の部分として、トランプ氏が煽ったような差別・排外主義—他国民への攻撃的意識、あるいは他国との対立—戦争につながる危険性もあります。(現にアメリカでは、トランプ氏当選を契機にKKKのような勢力や、今まで隠れていたレイシズムの膿が噴出してきています。ヨーロッパでもファシスト勢力が、勢いづいています。)

 今、私たちに問われているのは、このグローバリゼーションのうねり、それが生み出したナショナリズムのうねりに向き合って、いかに世界の人々の命・人権・平和を守り、自分たちの生活を築いていくのか、ということだと思います。

 その意味で、この状況に向き合うためこそに、フロムとアーレントと格闘してきたのではないかとさえ思えてきました。

 フロムは、ナチスを生み出したのは、30年代多くのドイツ人が、困難な経済・社会状況の中で、近代人特有の孤独と不安から「自由からの逃走」に走り、ヒトラーの権威にすがってしまったためだと分析しています。その同じ課題が、現代の私たちにも今問われているということだと思います。フロムが最後に強調していたように、ファシズムに対抗するためには、本当に命を大切にして、各人が積極的な自由をきちんと見出して主体的に生きていくということが大事になっています。

 また、アーレントが分析していたように、ナチス支配に対して、ドイツ人の多くが状況にthoughtlessになり、協力か非協力かの選択肢があったにもかかわらず、「悪の凡庸さ」と言われたアイヒマンのように、普通の人が主体的に考えることをやめてしまった結果としてナチスに加担していったという30年代の歴史がありました。であるならば、「アメリカのことは無関係」とか「国政のことはどうせ何も変えられない」などの判断停止におちいってはならず、今私たちは世界と日本の状況にしっかり向き合って、少なくとも考え続ける=意識し続けることをしなければならない状況にいると思います。

 そう、私たちは、これまでの人類の歴史やフロムやアーレントという先人たちの英知に学んで、それを生かして今の時代を責任持って生きていくことが問われていると思います。自分自身、および同時代に生きる世界の同胞の命のために。

 以上のような意味で、今年度の教養ゼミは私にとっては、とても大きな意味のある学びと気づき、そしてその交換の場になりました。

 皆さんにとっては、いかがでしたでしょうか?

 

2、来年度ゼミのプラン

 来年度は、受験シーズンが終わった春に、新大学生を迎えてスタートする予定です。顔ぶれも新たに頑張って生きましょう。

 秋の教訓では、カナダ留学中の人ともスカイプでゼミができましたので、国内の遠隔地に行った学生でも(あるいは関西にいても多忙で生駒に来られない人でも)スカイプで参加してもらうことができそうですね。

 

 それでどういう内容がいいか、考えていますが、今のところ、考えているのは、グローバリゼーションとナショナリズムの世界の動きについて

1)トッドの最近の著作などをいくつか読んで、世界の動きを考えていく。

アメリカ大統領選の結果やナショナリズムの負の側面ー差別・排外主義の噴出など影も大きいものが確かにありますが、一方でそれと向き合って、今を試練の時として、世界をよりよくしようとしている人たちも世界にかなり存在しています。そうした世界の状況をまずしっかりつかんでいきたいと思います。

2)日本国憲法について 

 1)をおさえた上で、その中での改憲の動きの意味を考えたい。

 今なぜ自民党は改憲をしようとしているのか?自民党の改憲案の研究。日本国憲法それ自体の研究(形成過程、世界史的意義など)

〜安倍さんが「憲法論議を巻き起こしていく」とおっしゃってますので、それに民衆の立場から応えて、しっかり身近なところ、地域から議論を積み重ねて生きましょう。戦後民主主義が、破壊されるか、私たち自身によってしっかり再構築できるかの分かれ目のような気がします。

 

 今のところ、このようなイメージで2か月に1回くらいはやって行きたいと思っています。

世界の大きな影に飲み込まれず意識的にがんばっている世界中の人々と共に、今私たちの現場から、光に転ずる道を歩み始めよう!

 

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