本文の構成を見抜け②“対比関係”

皆さま、おはようございます。こんにちは。こんばんは。大学受験パーソナルラボLEAD国語科の桝崎徹です。

 なんか、またえらい寒い日が続いていますが、風邪などをひいていませんか?国公立大学の前期試験を控えている受験生の皆さんは特にお身体に気を付けてくださいね。

前回のおさらい

前回は「入試現代文の筆者の主張を正確に捉えるとらえるためには、本文の構成を見抜こう!その構成には大きく分けて三つしかない。それは1.言い換え(イコールの関係) 2.対比(比べる関係) 3.因果(たどる関係) である。」ということ書き出し、前回は1.言い換え について書かせてもらいました。

 今回は、2.対比 について書いていこうと思います。最後までお付き合いくださいませ。

簡単に言うと対比とは・・

簡単に言うと、対比の関係とは、「筆者の主張を明確にしたいときに、それと反対のものを持ち出すことでわかりやすくすること」です。

 例えば、日本ついて論じたいときには西洋を、現代について論じたければ過去を持ち出すことによって、筆者の主張を明確にすることができるのです。ここで肝に銘じておかなければいけないのは、あくまで筆者は日本や現代についてのことを論じているのであって、西洋や過去はあくまで、主張を明確にするために持ち出されたにすぎないということです。

・・・いやいや、簡単に言うとなんて言いながら、なんかちょっと、自分の書いてる文章に酔ってますやん・・・というツッコミは大歓迎です!そうです、なんかちょっと、現代文の参考書に書いてありそうな文体を真似てみました。


**なお、この文章を書くにあたっては、ふくしま国語塾を主宰されていらっしゃる福嶋隆史先生の著書ふくしま式「本当の国語力」が身につく問題集(小学生版)(大和出版、2017年26刷)を参考にさせていただいております。引用箇所は、緑字で色をつけ(ふくしま式P.〜)のようにページ数をつけております。
引用の明示が遅くなったことを、福嶋先生にはお詫び申し上げます。**


 以下から、短文で確認していきましょう。

対比にも二種類ある

 対比には2つのタイプがあります。大きく分けて言いますと、“正反対の対比”と“ワンセットの対比”です。(ふくしま式P.49)この2つのタイプの対比について、短文で確認していきましょう。

正反対の対比

 以下の文章の(   )に言葉を入れてください。

(1)うさぎは足が速い。それに対して、かめは足が(    )。(ふくしま式P.50)

(2)秋はだんだんと気温が下がる。
それに対して、春はだんだんと気温が(    )。
(ふくしま式P.50)

 いかがでしょうか?(   )に言葉を入れられますね?
(1)の空欄には( 遅い )。(2)の空欄には( 上がる )ですね。

この場合、「それに対して」という言葉が、対比の目印になりますので、ラッキーと思いながら、チェックしましょう。

 この、「これに対して」と似たような働きをする言葉に一方」「」「だが」「ところが」「けれども」「にもかかわらず(ふくしま式P.51)などがあります。要するに、逆接の接続語が多いということですね。

 これらは、多くが「まったく正反対」になる対比の例です。

ワンセットの対比

 もう一つの対比はこんな感じのものです。

同じように、以下の(   )に言葉を入れてみてください。

(3) 勉強は大切だ。一方、(    )も大切だ。(ふくしま式P.50)

(4) おじいさんは山へ柴刈りに出かけた。一方、おばあさんは(      )に出かけた。(ふくしま式P.51)

 いかがでしょうか?(3)の空欄に( スポーツ )を入れた人は多いと思います。でもこれ、( 遊び )でも( 休憩 )でも正解になりますね。(3)の空欄には、さすがに( 川へ洗濯に )と書くべきでしょうが、これも( 公園にゲートボール )でも間違いではありませんし、( スーパーへ買い物 )でも正解になります。(ふくしま式P.126)

 この対比は先ほどの「正反対」になるべきものではなく、「ワンセット」(=観点をそろえる)対比だと考えてください。

 「それに対して」は多くの場合「正反対」の対比に用いられますが、「一方」にはこのような働きもあります。 

これはどうなの!?

 「・・・じゃあ、これはどうなのよ!アンタの言うことは分かるわよ。分かるわよ。でもね、でもね、私はわからない!」となぜかマツコ・デラックス化しつつ、以下の文章です。

(5) 日本はもう朝だ。しかし、アメリカはまだ夜だ。(ふくしま式P.51)

(6) 日本はもう朝だ。しかし、まだ空は暗い。(ふくしま式P.51)

 (5)は対比です。“朝”と“夜”がそれぞれ、対になっています。しかし、(6)は対比ではありません。(6)のようなタイプ(後半が前半に対して“予想外の展開”になっているタイプ)は“逆接”です。(ふくしま式P.51)「逆に」「でも」「しかし」「が」「だが」「ところが」「けれども」「にもかかわらず」などは、このように“逆接”の働きもあります。(ふくしま式P.51)

 “逆接”の場合、後半の方が大事なのです。

述語は大事!

 対比の文章を読むときに、また自分で書くときに、大事なのは「文の述部を対比にする」ということです。文の中で最も大切な言葉は、文末(述部)にあります。(ふくしま式P.53)

確認問題で定着させよう!

 以上のことをふまえて、[例]にならって、各文の(   )を埋めてみてください。

 [例] 白は明るい色である。それに対して、(  黒は暗い色である。 )(ふくしま式P.51)

※1.できるだけ「正反対」の対比になるように工夫してください。

※2.対義語(反対語)が思い浮かばない時は、否定語でもいいです。「さびいしい⇔さびしくない」など。(ふくしま式P.51)

(7) 池は底が浅い。一方、(                      )。

(8) 多数意見に賛成するのは簡単だ。それに対して、(                    )。

(9)「食材を買いに行った」というのは抽象的な表現だ。一方、(                       )。(ふくしま式P.52)

・・・いかがでしょうか?埋めることはできましたか?何度も言いますが、一切、「自分の考え」を入れる余地はありません。それが、「論理」というものです。「正反対にさせる」ことを意識しながら接続語の働きを見ていきますと・・・、

(7)には、( 湖は底が深い。)や、( 海は底が深い。 )などが入らなければいけません。

この問題に対して、以前、“一方、( 池には虫がいる。 )”と答えてくれた生徒がいました。・・・いや、そら、池には、よく見ると虫がいるかもしれませんわ。そら、事実です。せやけども、対比になっていないんです~!ちなみにその子は、「先週の試合では負けた。でも、(         )。」の(     )に、“・・・でも、( 勉強はがんばった。)”と書いてくれました。・・・これも、対比になってない。なんでそのような言葉を入れるのか聞いたところ、「自分なら、そうする。」ということでした。・・・うん。それは間違ってない。スポーツの試合で負けても、勉強では頑張る。それは素晴らしいこと!・・・いや、でも、あくまで「論理を追う」ことを考えないと。

(8)はどうでしたか?このあたりになると、機械的にはめ込んでいくのではなく、考えないといけませんね。あるいは一旦、言葉を入れてから、改めて考えてみることが必要です。意味が通じるか。

 多数意見に賛成するのは簡単だ。それに対して、( 多数意見に反対するのは難しい。)や( 少数意見に賛成するのは難しい。)(ふくしま式P.127)が入らなければなりません。入らなければならないんです。どうしてか?それが、論理だから。

(9)はどうでしょう? 「食材を買いに行った」というのは抽象的な表現だ。一方、( 「ニンジンを買いに行った」というのは具体的な表現だ。(ふくしま式P.127)) などが入らなければなりません。あ、別に食材はニンジン以外でも大丈夫ですよ。

 この問題に関しても、思い出があります。以前、ある生徒に解いてもらった時、「・・・一方、( 「食材を買いに行かない」というのは、具体的な表現だ。 )」と書いてくれた生徒がいました。多分、設問の下にある『※2.対義語(反対語)が思い浮かばない時は、否定語でもいいです。「さびいしい⇔さびしくない」など。』を読んで、「食材を買いに行かない」という表現を使ったのでしょう。しかし、これは全く対比ではないですね。また自分の書いた文章を具体的にイメージできていないのかもしれません。「抽象的な表現だ」に対する反対語が「具体的な表現だ」には正しく答えられているのですが、主語の方がよくありません。ちなみにこの生徒は高校三年生、理系の生徒でした。

「対比」のパターン各種

 上記の“接続語”を使ったものとしては、

[例] クーラーは涼しい。しかし、風呂上がりには、むしろ、扇風機の方が涼しく感じる。(ふくしま式P.55)

なんていう例文も作れますね。「扇風機は涼しい。しかし、むしろクーラーの方が涼しい。」では意味が通じませんね。「むしろ」は一般的な価値を逆転させるときに使います。一般的にはクーラーの方が価値が高いのですが、あえて扇風機の価値を強めます。(ふくしま式P.55)

「バスで行くと早く着く。しかし、この距離ではむしろ、歩く方が早く着く。」(ふくしま式P.55)などは正しい使い方ですね。

 こんなのもあります。

[例] 勝つために不可欠なのは、攻めることではなく、むしろ守ることである。(ふくしま式P.55)

この場合、「むしろ」がないことの方が多いかもしれません。

[ A ]ではなく[ B ]だけで用いられることは多々あります。英語の“not A but B”の構文ですね。大事なのは、Bなんです。読解問題の文章で「~ではなく」が出てきたら、すぐマルをつけてチェックしましょう!

(※文法的に「むしろ」は副詞になりますが、ここではひっくるめて逆接表現の接続語とさせてください)

対比の関係の最終形態“譲歩”!

 さて、いよいよ、対比の最終形態です。フリーザの第三形態だと思ってください!(近頃では、『ドラゴンボール』も生徒と共有できる話題ではなくなってきました・・・。涙)

 この、「文章の構成を見抜く」のは何のために必要であるのかということをもう一度確認しておきますと、それは、「筆者の主張を見抜く」ためでありました。

 筆者は、時に自分の意見とは反対の意見を取り上げることがあります。それは、後で自分の主張を強調するためなのです。その構文を、「譲歩」と言います。(簡単に言うと、「ちょっとゆずってあげること」です。)

 「私は反対の意見があることも知っていますよ、それでも、私の主張の方がいいんです!」というと、説得力が増しますよね。その意味では、小論文が必要な方は、この譲歩のテクニックは使えるようになれると強力な武器となります。

 また、この譲歩、皆さん、日常会話でもよく体験していると思います。いや、実験として体験してみてください。

 あなたは、男の子です。仲のいい女の子AちゃんとBちゃんがいます。あなたはAちゃんに、「なぁなぁ、Bちゃんて美人やんなぁ。」と問いかけてみてください。その時に何が起こるか?見事に、この譲歩のレトリックが発生いたします。

Aちゃんは十中八九、このように返答してくれることでしょう。

 「・・・うん。確かにBちゃんはまぁかわいいとは思うけど・・・。でも、ちょっと性格悪いねんなぁ。」

・・・恐ろしいものです。あんなに仲のいいと思っていた二人にもこのような関係が・・・!・・・いや、強調すべきはそこではないのです。

 このAちゃんのセリフそのものが、譲歩の構文であり、(※「確かに~~でも・・・・・・」は立派な譲歩の構文です!) 評論文の筆者は、これを一人でやっているのです。この時のAちゃんの主張は、「でも、ちょっと性格悪いねんなぁ。」です。

譲歩の確認問題

 次の文章を読んで、後の問いに答えてみてください。

 現代文は日本語だから勉強しなくてもよいという意見があるが、本当にそうだろうか。たしかに、現代文は読めばなんとなくわかるような気がする。しかし、現代文は勉強する必要がある。なぜなら、現代文は日常的な日本語よりも、はるかに難しいレベルの日本語であるからだ。

問.本文における「筆者の主張」は何か。次の選択肢①~④から、最も適切なものを一つ選べ。

① 現代文は勉強しなくてもよい。

② 現代文は読めばなんとなくわかる。

③ 現代文は勉強する必要がある。

④ 現代文は日常的な日本語よりもはるかに難しいレベルの日本語である。

・・・いかがでしょうか?

 わかりますね?正解は③です。「しかし」の後筆者の主張です。

①と②は、反対の意見です。④は、主張の根拠・理由です。改めて言うまでもなく、各選択肢は、確かに本文に書かれている文言です。しかし、書かれているものが全て正解になるはずがありません。(お!これ、譲歩です。) 設問が問いかけていることに正しく答えること、本文を筆者の論理で読んでいくことが、正解につながります。

【譲歩の合図のまとめ】

譲歩の合図をまとめておきましょう。

 「たしかに」「もちろん」「なるほど」「むろん」は「譲歩の合図」!

それに続く、「しかし」などの逆接の接続表現の後に、「筆者の主張」が書かれている!

 今回も、また長くなってしまいました。

 最後まで根気よく読んでくれた皆さん、ありがとうございました。

 次回は「本文の構成を見抜く」最後、「因果の関係」について書いていきたいと思います。

 ありがとうございました。


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